都市計画の入門書! 都市計画やまちづくりに関わる人に。――【感想】『入門 都市計画』
【この本を読んでわかること】
・都市が発生するそもそもの原理(分かりやすく説明されています)。
・人口減少時代に抑えておくべき、都市の重大な課題であるスプロールについて。
・都市計画の基本的な制度。
・都市の再構築方法に関する示唆。
・コンパクトシティなどの新しい都市概念の概説。
・変化の激しい時代において、常に都市計画の在り方を見直しながら進めていくことの重要性。
・現実空間を設計する都市計画が、ネット空間をも設計に盛り込む重要性。
・都市を計画する際に市民を含め誰もが知っておいてほしい事。
などです。
以下は目次です。
【文体や文章 まさに入門、分かりやすさNo.1!】
都市計画を知らなくてもさくさくと読める平易な文章で書かれていて非常に読みやすいです!
「です、ます」調であり、学術的な言い回しなどもなく、まさしく入門編にふさわしい良い本でした。
読み物としても優秀であり、というか都市計画の専門的な範囲はあまり入っていないと思うので、都市計画やまちづくりに興味を持ち始めた人が最初に読んで、都市計画やまちづくりに親しみを持てるように設計されているのではないでしょうか。
【内容 都市計画の大枠を一挙につかめます】
非常に良い本に出会いました、都市計画を初心者でもめっちゃ分かりやすくさわりの部分を理解させ、都市計画やまちづくりの面白さの一端に触れさせてくれる本です!
様々なトピックスがこの本の中でも紹介されているので、今回はその中でもいくつかのトピックを紹介しようかなと思います。
1.スプロール現象とそのデメリット
2.民間による都市開発戦略
3.スマートシティとスプロール現象の意外な関係
[1.スプロール現象とそのデメリット]
皆さんはスプロール現象という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
下の画像のような建物の配置の状態などが例えばスプロール現象が起きている状態です。
このようなあまり計画性を伴わない形で住宅などの建造物が建設されていってしまった例をスプロールと呼びます。
まるで虫に食われたかのように穴が開いているため、日本語では蚕食という言葉を用います。
都市計画がうまく機能せず、このようなスプロール型で都市が広がってしまった場合のリスクがこの本では指摘されていて、非常に参考になります。
例えば住宅がばらばらに存在していることから、水道や電気、鉄道やバスなどのインフラを計画的に通すことができず、結果的に無駄の多いインフラ網を構築してしまいます。
さらにその上、後でインフラの効率が悪いと気付いてもすでに住宅が存在していることにより、地価が上昇しているため、土地の確保のし直しにお金がかかり、再構築を行いづらいデメリットがあります。
これらの問題を有しているため、一般的にスプロールという都市の形態はあまり望ましくないことがこの本では分かりやすく書かれています。
[2.民間による都市開発戦略]
都市開発やまちづくりには民間も参入してきます。
この本では民間側から仕掛けられたまちづくりの例と行政側が仕掛けたまちづくりの例が対比されており、民間サイドの方が利潤追求型のまちづくりをしっかりと行うことが示されています。
これはもとから民間企業が利潤を追求しているので当然と言えば当然なのですが、行政も自分自身の財政を安定化させるために、利潤が発生するようにしっかりとビジネス的な目線を持って都市開発を行い、それによる税収アップを狙わなければならないなと考えさせられました。
この本で民間による都市開発戦略として出てくるのは鉄道会社であり、鉄道会社が鉄道沿線の街を利潤が上がるようにデザインして構築してきた様がざっくりとですが書かれており、民間の手法を勉強する上で役に立つなと感じました。
しかし、にしても鉄道沿線で都市を発展させてそこに人を呼び込み、最終的に鉄道の利用客にして利益をあげるって結構素晴らしい経営戦略だと思うんですよね……。
行政側の人はかつての鉄道会社で勤務しており、まちづくりに関わってきた人たちも招きながら今後の方針を練るのもいいかもしれません(ただ、今後は人口減少社会なので、駅を作ってまちづくりをして、では駄目なことは間違いないですが笑 民間の戦略的な慧眼を借りるのもいいなという話です)。
ちなみに、人口減少社会でのまちづくりや都市計画(こちらの本はさらに都市計画よりかな?)を考える際にはこの本もおすすめです。
[3.スマートシティとスプロールの意外な関係]
最近は都市計画において様々なコンセプトが口にされています。
コンパクトシティやサイバーシティ、スマートシティなどです。
その中でこの本で述べられている面白い話があります。
スマートシティ、特に各民家で太陽光発電で発電をし、そこで発電した電気を各民家で融通しあい、電力をうまく使おうというまちづくりのなされた場所では、スプロールの方が電力の融通という面ではよいという結論が出たのです。
というのも、マンションなどのようなものが高度に集合し、インフラを非常に整えやすい形で整備された都市は主に2点で電力融通に関して弱点がありました。
一つ目は同じマンションに居住している人同士が割と生活リズムが近く(これは本当なのかと思いましたが、原著論文を当たらないと詳細は分かりませんね笑 しかし、どういう原理で同じマンションの人の行動リズムがにかよるのか全く不明だ……年収?)、電力が同時間帯に消費されるために、お互いに融通することが行いづらい点。
二つ目は、そもそもマンションなどは屋上等に太陽光発電パネルを設置するほかありませんが、その発電量がそもそも低い点。
一方でスプロール型の都市はマンション型の建物に住む人と、その周りの通常の住宅に住む人とで生活リズムが異なっており、時間帯別の電力融通が行いやすいという結果が出たのです。
これに対して、この本では鮮やかに実際の都市計画に役立つような提言を出してくれているので、それを知るためにもぜひ読んでみると面白いと思います!
【見解 これからの都市計画やまちづくりに少しでも役に立てば】
個人的にこの本を読んで感じた都市計画やまちづくりに関する見解を少し。
この章ではこんなことを書きます。
1.都市計画とリモートワーク
2.都市計画とシミュレーションゲーム
3.都市計画やまちづくりで本当に大事なこと
[1.都市計画とリモートワーク]
最近は働き方改革が騒がれるようになり、新聞記事でもどこでも働き方改革の文字が躍っています。
その働き方改革の大まかな概要についてはこのあたりを参照してください。
(あしたのチームの記事を引用)
そして、その働き方改革の項目に、
5.テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
という項目があります。
働き方改革自体が割と「時間的な面で会社の外に出しただけ」という動き方改革程度の存在になりそうなところは置いておいても、⑤の項目はしっかりとテレワークの普及を目指していることが伝わります。
そして、これまでの都市計画やまちづくりはほぼオフィスへの移動、という概念を無意識のうちに計画していました。
車で合ったり電車で合ったりそれは様々ですが。
その点において、テレワークという選択肢がこれから強く打ち出されてくる環境では、テレワークを行う環境の創出なども都市計画においては大事になってくるかもしれません。
個人的に何かしら一つの提言をするのならば、例えば他業種で多様な人々が集うことができるテレワークのスポットを、スーパーなどのような普段の生活に結びつけた場所に併設して設置するのは悪くないかなと感じたりします。
他業種が集うという点で大事なのは、例えば以下の記事を参照してほしいです。21世紀のイノベーションの創出法の一つが「界隈性」を駆使することである、みたいなことが書いてあります。
dentsu-ho.com 他業種が集うコミュニティをいくつも作るというのは界隈性を高めるという点で大事だと思われます。
スーパーなどという提案については、単純に仕事帰りなどで買い物を奥さんから夫に頼むことができるからです笑
買い物が楽しいと思う人も多いかもしれないので無駄かもしれないですが、買い物に行くのが億劫なときには便利かなと笑
家事の分担にもつながりますし。
とても雑にアイディアを出してしまいましたね……。
とにかく、テレワークによるメリットを増幅し、デメリットを減少させるような都市計画を組み立てて、まちづくりを行っていく必要性があると感じました。
すでにテレワークをうまく導入している企業の話は参考になるかもしれません。
リクルートの奇策に関する記事は、名前が超格好いいことで有名な『日経BizGate』の記事です。
www.lassic.co.jp 最近読んだテレワーク関連で面白かった記事は↓です笑
keiei.freee.co.jp ただ、調べてみると今は見ていませんがリモートワークのデメリットを述べてくれている企業もあるので、企業ごとの体質や文化、どういう人を採用してきたかによって導入すべきかどうかは分かれそうですねー。
[2.都市計画とシミュレーションゲーム]
個人的には今とてもこれは熱いです笑(といっても、別に技術的な大革新が間近に迫っているとかそういう熱さではなく、単純に面白いという意味で笑 これから先の時代に大革新は来そうですが笑)!
都市計画にシミュレーションゲームを使って、いろいろやってみようみたいなプロジェクトっぽいんですが……。
『シムシティ』とか『創世記1602年』とか『Cities: Skylines』とか、そういう都市を作っぽいゲームをやったことがある人はわくわくするんじゃないですかね笑!
僕はめっちゃ面白い取り組みだと思いました笑
これは現実世界の都市計画をゲーム内でやってみた例。
しかし、驚いたのは『シムシティ(2013)』って道路の交通量とかも出せるんですね。
まあ、僕がやったことのない『cities: skylines』とかもそうなのかもしれないですが……。
この都市計画のゲーム上の交通量の情報と、Uberのmovementとかを組み合わせて、シミュレーションゲーム上のトラフィックは現実世界とどうずれているのかを計算すれば、シミュレーションゲーム内でのトラフィックの算出方法にさらに磨きがかかり、ものすごい精度の交通量シミュレータができるかもしれないとわくわくしています笑
[3.都市計画やまちづくりで本当に大切なこと]
そのすべてはこの素晴らしい記事に集約されています。
ぜひご一読ください。
以上、読んでいただきありがとうございました!
今回紹介した本は『入門 都市計画』でした。
今回の記事は自分が思ってたよりも、ちょっといいクオリティに仕上がったので嬉しいです!
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